ジョグジャカルタにおける訪問先

ラーマヤナ観劇
ボロブドゥール遺跡
プランバナン寺院群
以下のご案内は、主催者=松田仁が作成しました。
できるかぎりボブ・フィックスの教えに忠実であるよう心がけていますが、文責は松田にある旨、ご了承ください。

ラーマヤナ

ヒンドゥの教えを伝える、もっともポピュラーな娯楽

『ラーマーヤナ』は「ラーマ王行記」という意味で、『マハーバーラタ』とならぶ、インド2大叙事詩のひとつです。
 
インド文化圏におけるもっともポピュラーなお話しであると同時に、ヒンドゥー教の聖典のひとつともされます。

絵画、彫刻、建築、音楽、舞踏、演劇、人形劇、映画などさまざまな形で表現をされていますが、今回はインドネシア独特のガムラン音楽をバックにした舞踏劇を鑑賞します。

舞踏劇なのでセリフはなく、ただ観ていれば話の流れが理解できるようになっていますが、やはりちゃんとしたストーリーを知っていた方が、より豊かな鑑賞ができるため、おせっかいかもしれませんが若干の解説をさせていただきます。

おもなキャラクター

ラーマ

物語の主人公。
薔薇色の瞳を持つ英雄で、インドの理想君主像であり、ダルマ(宇宙の真理)を体現したとされます。

ヴィシュヌの化身(アバターラ)のひとつ。
つまり、ナラシムハの生まれ変わりであり、クリシュナやブッダの前生でもあります。

シーター

ラーマの妃。
敵役であるラーヴァナに捕らえられてしまうが、最終的にラーマたちに救出される。
ラーマはヴィシュヌの化身(アバターラ)であるため、その妃であるシーターは、ある意味ラクシュミーの化身だとも言えます。
 
宮崎駿監督のアニメーション映画『天空の城ラピュタ』のヒロイン、シータのモデルにもされています。

シーターが救出された後に、ラーヴァナに捕らえられていたあいだの貞潔を疑われたため、火山に身を投げて、身の潔白を証したというストーリーは、木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)の物語と共通しており、神話学上、さまざまな解釈がなされています。

ハヌマーン

猿の姿をした神。
風神ヴァーユと天女アンジャナーとのあいだの子。

顎が変形した顔で描かれる事が多いが、
「果物と間違えて太陽を持ってこようとしてハヌマーンは天へ上り、インドラのヴァジュラで顎を砕かれてそのまま転落死した。
ヴァーユはこれに激怒して風を吹かせるのを止め、みんなが困ったので、最終的に他の神々がヴァーユに許しを乞うたため、ヴァーユはハヌマーンに不死と決して打ち破られない強さ、叡智を与えることを要求して、神々がそれを承諾した」
という神話があります。

孫悟空のモデルとも言われます。

シーターの救出に際して、もっとも活躍をしたのがこのハヌマーンであることから、親愛と献身の象徴ともされます。
ハヌマーンがハートを全開にして、そのなかにラーマとシータが並んでいる絵も有名です。

ラーヴァナ

ラークシャサ(羅刹)の王。
日本語では、「鬼神」と訳されます。

本拠地はランカー島とされ、いまのセイロンがそれにあたると言われます。
「スリランカ」という国名は、ここから来ているそうです。 
太古の異民族抗争の名残で、悪者にされたのかもしれません。
 
仏教では「羅刹天」として、毘沙門天のもとで仏法守護の役目を担う形で習合されています。

ちなみに毘沙門天は、ELMとなじみの深いところでは財宝の神クベラと同一だとされています。
インドの神話では、クベラとラークシャサは異母兄弟として王権を争ったとされています。
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あらすじ

以下に、ウィキペディアからの引用にて、ストーリーを紹介しておきます。


第1巻 バーラ・カーンダ(少年の巻)
子供のいないダシャラタ王は盛大な馬祀祭を催し、王子誕生を祈願した。
おりしも世界はラークシャサ(仏教では羅刹とされる)の王ラーヴァナの脅威に苦しめられていたため、ヴィシュヌはラーヴァナ討伐のためダシャラタ王の王子として生まれることとなった。
こうしてカウサリヤー妃からラーマ王子、カイケーイー妃からバラタ王子、スミトラー妃からラクシュマナとシャトルグナの2王子がそれぞれ生まれた。
成長したラーマはリシ(聖賢)ヴィシュヴァーミトラのお供をしてミティラーのジャナカ王を訪問したが、ラーマはそこで王の娘シーターと出会い、結婚した。

第2巻 アヨーディヤ・カーンダ(アヨーディヤの巻)
ダシャラタ王の妃カイケーイーにはマンタラーという侍女がいた。
ラーマの即位を知ったマンタラーは妃にラーマ王子への猜疑心を起こさせ、ダシャラタ王にラーマをダンダカの森に追放し、バラタ王子の即位を願うように説得した
(ダシャラタ王はカイケーイー妃にどんな願いでも2つまで叶えることを約束したことがあった)。
ラーマはこの願いを快く受け入れ、シーター、ラクシュマナを伴って王宮を出た。
しかしダシャラタ王は悲しみのあまり絶命してしまった。

第3巻 アラニヤ・カーンダ(森林の巻)
ダンダカの森にやってきたラーマは鳥王ジャターユと親交を結んだ。
またラーマは森を徘徊していたラークシャサを追い払った。
ところがシュールパナカーはこれをうらみ、兄であるラークシャサ王ラーヴァナにシーターを奪うようにそそのかした。
そこでラーヴァナは魔術師マーリーチャに美しい黄金色の鹿に化けさせ、シーターの周りで戯れさせた。
シーターはこれを見て驚き、ラーマとラクシュマナに捕らえるようせがんだ。
そしてラーヴァナは2人がシーターのそばを離れた隙にシーターをさらって逃げた。
このとき鳥王ジャターユが止めに入ったが、ラーヴァナに倒された。

第4巻 キシュキンダー・カーンダ(キシュキンダーの巻)
ラーマはリシュヤムーカ山を訪れて、ヴァナラ族のスグリーヴァと親交を結んだ。
ラーマは王国を追われたスグリーヴァのために猿王ヴァーリンを倒した。
スグリーヴァはラーマの恩に報いるため、各地の猿を召集し、全世界にシーターの捜索隊を派遣した。
その中で、南に向かったアンガダ、ハヌマーンの1隊はサムパーティからシーターの居場所が南海中のランカー(島のこと。セイロン島とされる)であることを教わる。

第5巻 スンダラ・カーンダ(美の巻)
風神ヴァーユの子であるハヌマーンは、海岸から跳躍してランカーに渡り、シーターを発見する。
ハヌマーンは自分がラーマの使者である証を見せ、やがてラーマが猿の軍勢を率いて救出にやってくるであろうと告げた。
ハヌマーンはラークシャサらに発見され、インドラジットに捕らえられたが、自ら束縛を解き、ランカーの都市を炎上させて帰還した。

第6巻 ユッダ・カーンダ(戦争の巻)
ランカーではヴィビーシャナがシーターを返還するよう主張したが聞き入られなかったため、ラーマ軍に投降した。
ここにラーマとラーヴァナとの間に大戦争が起きた。
猿軍はインドラジットによって大きな被害を受けながらも次第にラークシャサ軍を圧倒していき、インドラジットが倒された後、ラーヴァナもラーマによって討たれた。
ラーマはヴィビーシャナをランカーの王とし、シーターとともにアヨーディヤに帰還した。

第7巻 ウッタラ・カーンダ(後の巻)
ラーマの即位後、人々の間ではラーヴァナに捕らわれていたシーターの貞潔についての疑いが噂された。
それを知ったラーマは苦しんで、シーターを王宮より追放した。
シーターは聖者ヴァールミーキのもとで暮すこととなり、そこでラーマの2子クシャとラヴァを生んだ。
後にラーマは、シーターに対して、シーター自身の貞潔の証明を申し入れた。
シーターは大地に向かって訴え、貞潔ならば大地が自分を受け入れるよう願った。
すると大地が割れて女神グラニーが現れ、 シーターの貞潔を認め、シーターは大地の中に消えていった。
ラーマは嘆き悲しんだが、その後、妃を迎えることなく世を去った。
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ボロブドゥール遺跡

啓発~アセンションをじっさいに体験する、タントラ・モニュメント

ボロブドゥールは、ジャワ島中部のジョグジャカルタ郊外に位置します。
ピラミッド、万里の長城とともに世界三大遺産のひとつとされます。

792年ごろにできたものだそうです(日本では平安京ができたころ)が、
じっさいには忘れ去られて、密林の中に埋もれていたのを、
1814年、ラッフルズ・ホテルで有名なトーマス・ラッフルズによって発見されました。

火山の降灰によるものであるとする説と、
イスラム教徒による破壊をおそれて人びとが埋めたという説があります。
土台の底辺が一辺115mの正方形で、高さは42m。

下から上に 4段の回廊、1段の方形層、3段の円壇テラス、
メインストゥーバを含めて地上に9段、
そのほかに地下部に1段あります。

9という数字は、精神性を表す数3を、さらに3倍したもの。
かつ10進法のなかではいちばん大きい数でもあり、
数秘術においては魔術数とも呼ばれ、聖なる数字のひとつ。

(ちなみに、仏教でおなじみの108という数字は9×12であり、
 なおかつ数字をばらして1+0+8を足すと9になります)

そして、一番上がメインストゥーパになっています。

ストゥーパとは日本語ではお墓などにある卒塔婆(そとば)。
本来は、仏舎利=お釈迦様の骨をおさめる塔のこと。
ここにも、もともとはお釈迦様の骨が収められていたといわれます。



ボロブドゥールの場合、全体がひとつのストゥーパであると同時に、
その上にもたくさんのストゥーパ=全部で72基がある
特殊なつくりになっています。

72のストゥーパのなかには仏像が設置されています。
仏像は、第一回廊から第四回廊の壁龕(くぼみ)に432体。

合計で、504体の仏像があることになります。

72=7+2=9
432=4+3+2=9
504=5+4=9
いずれも数秘が9になっています。
ボロブドゥールはお寺なんだけど、内部構造がないというのが特色のひとつ。
9層の回廊は、仏教における三界をあらわしているとされます。

三界(さんがい)

  • ■欲界
    淫欲と食欲の2つの欲望にとらわれたものの住む世界
    六欲天から人間界を含み、無間地獄までの世界

  • ■色界
    欲界の2つの欲望は超越したが、物質的条件(色)にとらわれた存在が住む世界

  • ■無色界
    欲望も物質的条件も超越し、純粋意識が禅定の状態で住んでいる世界

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ボロブドゥール寺院はいまは遺跡となっていますが、
もともとは、ただそれを見物するだけでなく、
じっさいに自分の身体を使って、
めざめとアセンションへの道を一歩ずつ進めていく体験をするようにできています。

「じっさいに身体を使って体験をする」というのは、
タントラ(密教)の特徴のひとつです。




そこで、まず人はじっさいにボロブドゥールの寺院跡に昇る直前に、
ちらりと地下にあたる部分を垣間見ます。

そこには、欲界にあたる部分がレリーフに刻まれています。

立ち止まらずに踏み越えていくべきところですが、
気になる人もいると思うので、チラ見せで(笑) 


人々が酒宴に興じているところです^^
そのうえで、まず一層目にあたる部分、
すなわち基壇に入っていくわけですが、
ここはまだ欲界と接しているところ。

ふつうの人はこの世界のなかだけで、ただ生まれ、
そしてときとして欲界とのあいだを行き来しながら生活に追われ、
そして死んでいきます。


でも、何人かの人は、そこからさらに上層に行こうとします。

すなわち、よく分からないままではあるけれど、
何かしらよきことを求めて、上に昇ろうとするわけです。
ちなみに一層目の足元にあたる部分には、
ジャータカといってお釈迦さまの前世が描かれています。

たとえば、過去生はウサギで、みんなが神さまにいろいろな捧げものをしているのに、
自分は捧げるものが何もないので、自分を食べてくださいと言って身を差し出したとか……。
 
そして、2段目からはおもに華厳経というお経をベースに
仏の世界を求めて旅をする過程が描かれています。
 
ボロブドゥール寺院の基本は、華厳経の教えに沿ってつくられています。
そして、じっさいに回廊をめぐりながら、建物を上に昇っていくことが、
いわゆる「人生」にあたります。


ボロブドゥールにおける正式な参拝のしかたは、
1層につき4周ずつ回廊をまわりながら上階に昇っていくのだそうです。
(みなさまは、どうぞご自身の判断で……)

方形の階層の東西南北にひとつずつ階段があるのですが、
階段のところに行かないと上は見えません。


人生もまた同じだとされます。
ふだんは、同じところをグルグル周っていて、ときおり上に行く道が開ける。
でも、チャンスを逃してしまうと、また同じところを周りつづけないといけない……。

そして、階段は上に行くだけでなく、下にもつながっている。
つまり、ときとして下へ転落する恐れがないとは言えない……。
そうして、色界にあたる下の5層を昇りきると、そのうえはテラスになって開けているため、
メインストゥーパ、すなわち啓発の世界がいつでも見えるようになります。


そして、下の5層は四角い方形なのですが、ここから上は円壇のテラスになります。

四角は現実世界──東西南北、春夏秋冬、上下左右、地水火風、起承転結を表わし、
円は、完全性や円満、調和を表すとされます。



円壇も3層になっています。

ぜんぶで72のサブストゥーパが並んでいて、
ひとつひとつのなかに仏像が設置されているのですが、
3層のうち一番下の層にあるストゥーパは窓が菱形、
その上の層のストゥーパの窓は四角になっています。

これは、境地の安定度の違いを示しているそうです。
そして、いちばん上のメインストゥーパには窓がなく、
なかは空っぽのスペースになっていると言います。

すわなち空(くう)です。
先に、ボロブドゥールは華厳経の教えに沿って造られていると書きましたが、
じつは上部は『初会金剛頂経』というタントラ(密教)経典にもとづくマンダラになっています。


マンダラというのは、基本的に中心に大日如来がいます。
(ボロブドゥールでは、じっさいに「何もない空間」でそれを表わしているわけですが)
そしてマンダラでは、空=大日如来のもつ4つの側面を、
さらにひとつずつの仏さまの姿で表します。


■阿閦(あしゅく)如来(大円鏡智)=とらわれなく、ものごとをありのままに見る
■宝生如来(平等性智)=自分と自分以外のものとが隔たりなく、一体である境地
■阿弥陀如来(妙観察智)=真実を見てとる
■不空成就如来(成所作智)=人々の役に立つことを具現化すること

ご参考までに、下図の左がボロブドゥールを上から見た図、
まんなかが真言宗の金剛界曼荼羅、
右がその解説図です。
ボロブドゥールでは第4層(第3回廊)までは、
東西南北の各面にそれぞれの如来が配置されています。


第5層(第4回廊)の64体は、東西南北ともに毘盧遮那仏とされます。
毘盧遮那仏というのは、華厳経に記されている大日如来の元の姿です。
ちなみに、奈良の東大寺は華厳宗の総本山で、有名な奈良の大仏も毘盧遮那仏です。

経典の言葉では「ディワルーパ(光り輝く者)」として記されています。
ただ悟りを開くというだけでなく、
「アセンション(ライトボディの獲得)」という理解もできるかもしれません。



円形壇には72体の仏さまがいますが、これは金剛薩埵(あるいは釈迦如来)とされます。
 
金剛薩埵は、大日如来の化身であり、
タントラ(密教)の修行僧が達成できる究極の姿を表しています。

ちなみに、チベット密教では大日如来はほとんど登場せず、
もっぱら金剛薩埵を奉って修行をします。
そして、
釈迦如来は金剛薩埵のひとつの姿であるとみなされます。
 
ここでは、じっさいに「ディワルーパ(光り輝く者)」を体現した存在として、
毘盧遮那仏よりもさらに上段に据えられていることになります。

つまり、私たちがボロブドゥールというモニュメントを昇り、
毘盧遮那仏という光の体験を通して、
中空のストゥーパのある最上階まで辿り着いたとき、
私たちは金剛薩埵(あるいは釈迦如来)と出会う──
すなわち、私たち自身が金剛薩埵(あるいは釈迦如来)になる、
というのがボロブドゥールの造りになっているわけです。



仏教では三身と言いますが、
ELMでも「ブッダカヤ・スートラ」の伝授を受けたられた方もいらっしゃることでしょう。
それに当てはめると、以下のような対応になるかもしれません。

仏の三身(ブッダカヤ)

  • 法身(ほっしん)=ダルマカヤ  
    永遠不滅の真理。色も形もない身体
      
    意識の起源(空)
      
    =最上部にある、中が空洞のストゥーパ

  • 報身(ほうじん)=サンボガカヤ  
    ある種の人格をもった仏の姿
    マヤ(幻影)、サムサーラ(輪廻)であり、かつ「至福の遊び場」
    =毘盧遮那仏、およびその下に並ぶ、それぞれの如来

  • 応身(おうじん)=ニルマナカヤ
    人々を救済するために、じっさいにこの世に現れる存在
    アセンションボディ
    =最上階の金剛薩埵(釈迦如来)
    (私たち自身も、最上階まで昇ることによって「金剛薩埵(釈迦如来)になる」、すなわちアセンションをする)

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少しむずかしい話になりましたが、
もしかしたらこれから伝授を受ける方がいらっしゃるかもしれないので、
参考までにご紹介をした次第です。


現地での過ごし方は自由行動にする予定ですが、
よかったら下から順番に回廊をめぐりながら、
じっさいにその世界を体験なさってみてください。
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プランバナン寺院群

伝説に彩られた[ヒンドゥ+仏教]複合寺院

プランバナンは、ジョグジャカルタ近郊で、
ボロブドゥールと並ぶもうひとつの世界遺産です。

メインはヒンドゥ教のお寺ですが、同じ敷地に仏教のお寺も配置されています。

創建の年代は諸説ありますが、着工は8世紀末までさかのぼると言われており、
そうだとするとボロブドゥールとほぼ同年代ということになります。

現在に至るまでに移転や、地震による崩落、盗掘による被害等がありましたが、
とくに1990年以降はヒンドゥ教の礼拝や儀式の中心地として再興され、
いまもまだ正式な、そしてインドネシア最大の寺院になっています。

そんなこともあり、ボロブドゥールが「遺跡」あるいは「寺院跡」とされるのに対して、
こちらは「寺院群」と称されるのが一般的です。




この寺院にまつわる伝説として、つぎのようなお話が知られています。

『ロロ・ジョングラン伝説』

かつて王国に、「痩身の処女」として知られる
ロロ・ジョングランという王女がいました。

王国では、バンドゥン・ボンドウォソという大男が
国王を殺害して新たな支配者になり、
王女は結婚を迫られます。

王女はそれを断るため、「一晩で千の寺院(神像)を造ることができたら」
という条件を提示します。

ところが、バンドゥンは精霊たちを操って
夜明けまでにつぎつぎに寺院(神像)を作り上げていきます。

焦った王女は侍女たちに米を挽かせると、
朝が来たと勘違いした鳥たちが鳴きはじめ、
太陽が苦手な精霊たちは最後の一体を残して去ってしまいました。

この顛末を知ったバンドゥンは怒り狂い、
ロロ・ジョングランに千体目の像になる呪いをかけたのです。

それで、王女は最後の千番目の像として、もっとも美しい石像となりました。
それが、プランバナン寺院のシヴァ祠堂の北の側室にあるドゥルガーの像なのだそうです。

そして、伝承によると、未完成となった千番目の寺院は、
近隣にあるセウ寺院であると言われます。
(セウは、ジャワ語で「千」という意味だそうです)
1,000という伝説ではありますが、じっさいには
もともとプランバナン寺院には240基の祠堂が立ち並んでいたとされます。

プランバナン寺院複合体の祠堂群

  • トリムルティ(三神一体)祠堂 : 3基
     シヴァ(中央)、ヴィシュヌ(北)、ブラフマー(南)の三大神に捧げられた3基の主要な祠堂
  • ヴァーハナ祠堂 : 3基
    各神のヴァーハナ(乗り物)であるナンディ(中央)、ガルーダ (北)、ハンサ(南)に捧げられた三大神の祠堂の前にある3基の祠堂
  • アピット祠堂 : 2基
    トリムルティの祠堂とヴァーハナの祠堂の列の間に位置する内苑北側と南側にある2基の小祠堂
  • クリル祠堂 : 4基
    内苑の主要な四方の塔門(ゴープラ、尼: Gapura)のすぐ内側の主軸上にある4基の小祠堂
  • パトック祠堂 : 4基
    内苑の四隅にある4基の小祠堂
  • プルワラ祠堂 : 224基
    内苑を囲む同心の方形の4列に配置された数百基もの小祠堂。
    内列から外列に向けて小祠堂は、44基、52基、60基、68基を数える
  • ここをクリックして表示したいテキストを入力してください。
現在は主要部は修復されていますが、
まだ周辺の祠堂は崩壊したままで、石材が散乱している状態です。



プランバナンの見どころは、やはり中央の「トリムルティ(三神一体)祠堂」。

なかでも、まんなかの「シヴァ祠堂」は、全高47メートル、幅34メートル四方。
寺院群のなかで、最大、そしてもっとも高い建造物です。
インドネシアでは三神のなかでも、とりわけシヴァに人気があったようです。
堂内には四方の側室4室と、中央部にある主室1室からなる5つの部屋があります。

東正面の側室からは、主室に通じるようにしてシヴァ像が安置されています。

そのほか3房の側室には、南の側室にアガスティア(シヴァの化身)、
 ※たしか、ババジにアセンションテクニックを伝授したのも、アガスティアだったかと
西の側室にガネーシャ(シヴァの息子)、
北の側室には女神ドゥルガー(シヴァの妻)像

──それぞれシヴァと関係の深いヒンドゥー教の神像が安置されています。
なお、堂内からは分からないけれど、
高いピラミッド状の尖塔のなかには、空洞のスペースが設けられていて、
ボロブドゥールとはまた違った形で三界が表現されているようです。

■ブルロカ(欲界)
淫欲、欲望、不浄な生き方に縛られている最低領域の人間、動物、悪霊たちの世界

■ブヴァルロカ(色界)
聖人の中間領域
聖仙(リシ)、行者、神人が占める場所
ここで、人は真理の光を見はじめる

■スヴァロカ(無色界)
神の最高かつ神聖な領域
「ブラフマー祠堂」と「ヴィシュヌ祠堂」も立派ですが、
やっぱり「シヴァ祠堂」に比べると地味かな^^



トリムルティ(三神一体)祠堂のまえには、
シヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマー各神のヴァーハナ(乗り物)を祀る祠堂があります。
ヴァーハナ(乗り物)は、

■シヴァ: 牡牛ナンディ
■ブラフマー: 白い聖鳥ハンサ
■ヴィシュヌ: 神鳥ガルーダ

とされますが、現在はナンディのみが遺され、ハンサとガルーダは祠堂のみで、神像はありません。
敷地の中央部はヒンドゥ教の教えにもとづいた祠堂がメインになっていますが、周辺にはたくさんの仏教寺院跡があります。

敷地内では、有料になりますが、 トイトレイン、ゴルフカート、レンタサイクルが利用可能です。

一応、観光案内をご紹介しておきますが、コロナ禍以降、一部運営が制限されているとの情報もある旨、ご了承ください。